| DOWN THE ROAD (2002, Exile/Polydor) |

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90年代以降もほぼ毎年コンスタントに新作を出してきたヴァン御大だが、最近はちょっと共演アルバムとかで趣味に走りがちだった。
この人は今や人間国宝のようなもので、新作に「冒険」や「目新しさ」を求めてはいけないことはよく承知している。まあ実際今回もまたここ10年間の路線通りの、ブルーズ〜R&B〜ジャズ〜ロックが混然とした音で、一聴してすぐ彼だとわかる音である。
しかし気になるのは、音に緊張感がなくなっていることだ。私に最大のインスパイアを与えた師に対してあまり偉そうなことは言いたくないが、はっきりいってこれでは「惰性」だ。曲のタイトルやテーマにも、これまで彼自身がさんざん使い古してきた言葉が並ぶ。いや、実はそうなってしまう原因もよくわかっている。60にもなって、毎年毎年曲のネタになるような目新しいテーマを10も20も見つけてこいというのは酷な話だ。そして更にこの人の場合、人類の永遠かつ最大のテーマである「エロ」が実質的に禁じ手なのだ。これが、何よりも辛い。ブルーズ系のベテランなんかは70になっても80になってもエロネタで易々と新曲を書くが、80年代以降のこの人の作品には不自然なほどエロの香りがない。以前はそれが修行僧や仙人のような神々しさを漂わせていただのが、そこから“鋭さ”が失われると、今度は(悪い意味で)枯れて聴こえてしまう。
何だかんだ言いながら私はこの人の新作を一生買い続けるし、今やそういう人しか買ってないかもしれないから、どんなに酷評しようが関係ないかもしれないけど。(しんかい)
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| THE SKIFFLE SESSIONS Van Morrison/Lonnie Donegan/Chris Barber (2000, PointBlank/Virgin) |

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どちらも共演盤・企画盤とは言え、2000年に2枚のアルバムを出したヴァン・モリスン。60年代末にソロキャリアをスタートさせて以来、70年代の3年間の引退期間を除けば、ほぼ毎年新作を出し続けている驚異的な働き者である。しかしどうもこのところめちゃめちゃ趣味に突っ走った作品が多く、モリスンを師と崇める私でさえ満足に聴き通しもしないような作品が出てきてるのも確か。本作も、それに当たる。
50年代後半にイギリスで何十曲も立て続けにヒットさせて「King Of Skiffle」と称されるロニー・ドネガンと、その同じ時代にややジャズ寄りのバンドで活躍したクリス・バーバー。自分よりも10年以上先輩となる二人に、70年代から交流のあるドクター・ジョンを加えた、故郷・ベルファストでのライヴ。これだけだと凄い豪華メンバーのゴージャスなライヴという感じだが、曲目は50年代を中心とするカバーで、アレンジもほぼ当時のまま。モリスンのぴりっと締まったボーカルが聴ける間は全体の空気も引き締まるが、流石に他のおじいちゃんたちが歌うと、現役を退いたベテランらしいほのぼの感が漂ってしまって、ちょっとCDで鑑賞するのは辛い。ライヴのその場にいれば楽しいんだろうけどね。決して悪い出来の作品ではないのだが、これは正直なところ、10人中9人は聴いていて退屈だと感じてしまうだろう。(しんかい)
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| PHILOSOPHER'S STONE (1998, Polygram) |

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おう。まあ座れや。え、ヴァン・モリスンなんて聴いたこともないからいいって?いいから遠慮すんなよ。え、遠慮してるんじゃなくて本気でいやがってんの?こんな過去の栄光でメシ喰ってる老いぼれには興味ねえって?おうおう、威勢がいいねえ。若い奴はそうじゃなきゃいけねえや。(ガツン!)
おう、気がついたかい。手荒なことして悪かったな。これ、聴き終わったら、縄、解いてやるからな。ヴァン・モリスンの71年から88年までの未発表曲集。2枚組にぎっちり30曲。どうだい、この芳醇な空気。お前がいっつも聴いてるような若い連中にゃこういう味は出せねえだろ。人生の重みってやつが分かってるんだよな。この渋味。この躍動感。楽しいことも悲しいこともみんな人生だ。な、「生きてる」んだよ、この音楽は。だから25年前の音なのに、古くないんだよ。
ああ、もう終わっちまった。どれ、解いてやるか。「はぁ、はぁ、あー苦しかった」 どうだ、ビールでも飲むか?「いや、おじさん、ウイスキーがいいな。それ、もう1回かけてよ」(しんかい)
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| THE STORY OF THEM FEATURING VAN MORRISON Them featuring Van Morrison (1998, Decca/Polygram) |

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むかし、ゼムというバンドがいた。この時代のブリティッシュ・バンド、ビートルズやストーンズやアニマルズ、キンクス、スモール・フェイセズ、どれも歴史に名を残す名バンドばかりだが、誰もがR&B、ブルースの影響を公言した。その中で、圧倒的なドス黒さを体現し、故に「濃すぎる」存在になってしまったのがゼムだった。せっかくイギリスばかりかアメリカでもシングルヒットが出て、レコード会社が「アニマルズに続け!」と色めき立っているのに、ヴァン・モリスンはちっとも協力しないで、ステージでは渋いブルースのカバーばっかりやって自分のヒットは演奏しない、なんていう偏屈ぶりだったらしい。彼は徹底的に「売れ線に走る」ことを嫌った。彼には自分のやりたいことがはっきり見えていた。その熱さ、徹底したこだわりが、30年以上の歳月を経て蘇る。2枚のオリジナルアルバムの他にも編集盤が入り乱れていたが、すべてのスタジオ録音をまとめたというコンプリート作品集が、この49曲入りの2枚組。自分が生れる前の音だというのに、少しも古くない。(しんかい)
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| THE HEALING GAME (1997, Polydor) |

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ここのところGeorgie Fameとのジョイント、Mose Allisonのトリビュート盤と、地味な企画もの続きだったヴァン・モリソンが、久々のソロ盤を発表。全く期待を裏切らないというか相変わらずのモリソン節で、温かくも耳に心地よいR&Bサウンドが堪能できる。ただ歌詞が伝えるのは内省的な心情の吐露が多く、現代の悲しむべき事件に対する無力感("Rough God Goes Riding")、周りに注目されるが故の重荷("This Weight")など、必ずしもアップビートな内容ではない。しかし考えれば昔からR&Bは人生や生活の苦しみ、満たされない思いをアップビートなメロディとリズムに載せた表現手段。その意味で、この作品はアイルランドの誇りがR&Bの原点に立ち返り、自分の世界を表現しきった傑作といえる。ChieftainsのPaddy Maloneyを迎えて祖国アイルランドの美しい自然を讃えた「Piper At The Gates Of Dawn」はことに美しい。(阿多)
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