BOB MARLEY & THE WAILERS

CATCH A FIRE (DELUXE EDITION) (2001, Tuff Gong/Island)
ここでこのアルバムが買えます  1972年、アイランド・レコーズの社長、クリス・ブラックウェルは、当時ロンドンにいたウェイラーズという、ジョニー・ナッシュ(「I Can See Clearly Now」のオリジナル・ヒットを持つ)のバックをやっていたバンドから援助の要請を受ける。それまでウェイラーズのいくつかのシングルをワン・ショット契約で出していたブラックウェルは、このバンドを、71年の「Wonderful World, Beautiful People」の全米ヒットですでにブレイクしていたジミー・クリフに続く、レゲエのスターにしようと画策する。ブラックウェルは彼らにレコーディング費用を渡し、キングストンで録音されたテープを受け取る。が、その音楽を欧米の市場に叩き込むには、そのままでは困難と判断したブラックウェルは、そのトラックにイギリスのミュージシャンのオーバーダブを加えることを決断する。そうして、ウェイラーズ初めての欧米向けアルバム『Catch The Fire』は73年4月に発売される。
  以上が、このアルバムの背景というわけだが、個人的にそんな事情を知ったのはつい最近、ビデオの「メイキング・オブ・『キャッチ・ア・ファイヤー』」を見てからだったりする。それまで、このアルバムはあくまでボブ・マーリー以下ウェイラーズのメンバーによって演奏されていたとばかり思っていたのだった。そんなわけで、このアルバムには、アルバム・ヴァージョンの他にオリジナル・ヴァージョンが存在するということが明らかになり、その音源を探そうということになって、それが30年ぶりにようやく発見された、というのがこのCDの発表に至る事情。つまり、この2枚組CDは、1枚には現行ヴァージョン、もう1枚にジャマイカ録音のオリジナル・ヴァージョンを収めたという、ビーチ・ボーイズで言えば『スマイリー・スマイル』と『スマイル』をセットにしたような、そのスジの方には信じられないようなブツだったりするのである。
  でまぁ、発掘された事実そのものだけを取り上げても意味ないわけで、問題は中身の音。実はこのアルバム、日本で正式に「レガエ」(当時はこう呼んだ)として紹介された初めてのアルバムでもあって、結構FMで耳にしてたんだけど、その時はアルバム・ヴァージョンでも「強烈にイナたい音」という印象が強かった。その後さまざまなレゲエに触れて、イナたいという印象は薄らいだものの、陰影の濃い強烈なサウンドの感触はそのままだったりする。かなりアナログっぽくリマスターされたこのCDで、その印象はより強められた。ところが、もう1枚のオリジナル・ヴァージョンの鮮烈さは、アルバム・ヴァージョンがヤワに聞こえるほどで、夾雑物を削ぎ落としたサウンドの強靱さは比肩するものがない。のちに国民的英雄となり、死してジョン・レノンに並ぶアイコンと化したボブ・マーリーの原点とは何だったのか、このヴァージョンが如実に物語っている。改めて、自分がレゲエのどこに惹かれたのかがよくわかった。もちろん、アルバム・ヴァージョンは73年の欧米の音楽シーンを考えると、ひどく順当な対応であった、というか、とにかくレゲエを世界中に聞かせるのだ、という強い意志を感じさせるという意味では、逆にある種の感動を覚えたりもする。
  ともかく、とんでもない熱量が詰まったこのアルバム、買わなくてもいいから、とにかく聞きなさい。(Yaz)


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