SHELBY LYNNE

LOVE, SHELBY (2001, Island)
ここでこのアルバムが買えます  カントリーシンガーとして'89年にデビューを果たし既にカントリーのアルバム5枚出しているシェルビー・リンが前作『I Am Shelby Lynne』で突如路線変更、ロックシンガー(と言い切っていいかは別にして)に転向し、しかもグラミー賞新人賞(前のキャリアは無しってことになったのでしょうか?)を受賞したのはちょっとした驚きとともに皆さんも鮮明に覚えておられるでしょう。前作はカントリーからの脱却を明確にするためもあったのだろうか、ソウルフルでブルージーな音が強調されて、それが彼女のエモーショナルな表現を幾重にも深い世界に導くのに結果的に成功させたのだと思われるが、対して今回のアルバム『Love, Shelby』はプロデューサーにあのアラニス・モリセットのプロデュースで有名なグレン・バラードを迎え、いわゆる多少ギターの音が強調されたエッジの効いた音に変更されて、そこに彼女のエモ−ショナルな声が絡むようになった。果たしてアルバムそれぞれの曲は前作よりも、より形が鮮明になり、さらには映画『ブリジット・ジョーンズの日記』にも使用された「Killin’Kind」に代表されるようなキャッチ−な佳曲(つい、歌っちゃうなー)も生まれ、それはまた新しい彼女の魅力を作り上げたといっていいと思うが、これはかえって歌のさらに奥にある彼女の深い感情の焦点をぼやけさせ、ちょっと霞がかかって見えなくさせてしまった気もする。「Mother」も本家ジョンレノンに負けないくらいに鬼気迫るほどの迫力で歌い上げほど彼女の実力はあると思うのだが、アルバムのバージョンはどこか物足りない。前回のアルバムジャケットの黒を基調としたトーンとは違って、今回のそれは白を基調とした幾分ポップなトーンに支配されていて、彼女の心の発露もそれに引っ張られているのか。ちゃんと商業ベースにのせてプロデュースするには彼女は実力があるだけに生半可には出来ない難しさがあるのだろうな。(田鍋)
I AM SHELBY LYNNE (2000, Island)
ここでこのアルバムが買えます いきなり冒頭から飛び込んでくるフィル・スペクターがちあきなおみをプロデュースしたようなドラマチックで力強くも美しい「Your Lies」にノックアウトされる。それに続く「Leavin'」「Life Is Bad」「Gotta Get Back」といった曲での彼女の歌とサウンドには、『Dusty In Memphis』あたりをふと想起させる、とてつもなく懐かしく、それでいて多分10年後に聴いても決して最初に聴いた時の圧倒的な感触を失っていないだろう、そんな確信さえ持てる普遍性がある。そうした音の中で歌われる世界はティーンエイジャーの時に両親を銃殺・自殺で失うという衝撃的な経験を持つ彼女がこれまでに経験してきたであろう、人生の痛みや不合理さ、そして失われた愛への苦い思いなどが濾過されたクールでありながら胸を締め付けるようなエモーションに満たされた世界だ。グラミー新人賞の受賞スピーチにもあったように、才能を認められながらもこれまで自らの歌の表現を正しく引き出す機会なく、決して恵まれないキャリアを積んできた彼女に取って今回あのシェリル・クロウの才能を完璧に引き出したビル・ボトレルと組むことによって作り上げることのできたこのアルバム、2000年に筆者が出会ったアルバムの中で最も嬉しい驚きを与えてくれた作品だ。ひとこと、名盤です。(阿多)


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