JULIAN LENNON

PHOTOGRAPH SMILE (1998, 4Tune / Pinnacle)



 80年代のジュリアン・レノンにはまったく興味はなかった。父親にはとうてい及ばない、これといった特徴のない凡庸な歌い手という記憶しかない。「総領の甚六」なんて諺をつい思い出してしまうほど、面白みのない曲を適当に歌っている印象だった。気がつけばいつの間にか音楽シーンから消えていて、ちょっと前には破産宣告したというニュースが音楽誌の片隅に載っていたのを覚えている。そんなわけで自主レーベルからの再出発に当たるこのアルバムもたいした期待をせずに聞いたのだが、意外なことに、ポール・ウィリアムスやハース・マルティネスなどのカムバック作などとも共通した、地味ながら丁寧に作られた佳作だった。往年と特に異なるのは、各曲のクオリティと歌に込められた情感の深さだろう。ドーナル・ラニー(日本ではソウル・フラワーとの共演でおなじみ)などのバック・ミュージシャンがいい仕事をしていて、ボーナス・トラックのアメリカのカヴァーに顕著なように、歌に沿ったアレンジを丁寧に紡ぎだしている。義弟のような才気はないが、聞いていて気持ちいいアルバムだ。(鎌田)


copyright(c) by meantime 1998-2003 all rights reserved.
無断転載を禁じます。