JEWEL

THIS WAY (2001, Atlantic)



 若手女性シンガーソングライターの中では実力No.1と言って差し支えないところまで来た感のある、ジュエルの三枚目のアルバム。大ヒットしたものの地味な弾き語り中心の一枚目、かなりポップな路線に傾いた二枚目、それぞれのいいところを継承して高みに達した。あまりポップになりすぎると彼女の歌の上手さが活かしきれないし、かといって技巧に走りすぎると一部のマニアしかついてこない。そのジレンマを解決するべく、彼女の持ち味である心温まる弾き語りに適度にポップな加工を施し、より高い普遍性を持たせることに成功した。とはいえ曲の多様性までは失われていない。軽快かつ爽やかにアルバムの冒頭を飾る「Standing Still」、心に響く癒しバラード「This Way」、そしていつになく力強いナンバーの「Do You Want To Play?」「Love Me, Just Leave Me Alone」など、幅広いジュエルの音楽世界が堪能できる。
 サラ・マクラクランも4作目『Surfacing』(97年)で完璧な作品を生み出した。ジュエルも次作で女Vo.界の頂点に上り詰めることが出来るかどうかといったところ。少なくともこのアルバムがそれに向けて大きなステップアップとなる作品に相応しいことは確かである。(小川ボ)
SPIRIT (1998, Atlantic)



 前作で見事にブレイク、一躍全米メディアの注目の的となったジュエル。放浪の旅を続けながら心にしみ入る歌を紡ぎだしていたアラスカ出身の少女が、このブレイクによってどう変わるのか、熱心なファンの間では少なからず心配する向きもあった。そんな中リリースされた本作は、前作の彼女の歌に魅了された者であれば諸手を挙げて歓迎するに違いない、紛れもないジュエル・ワールドを前作以上の自信と繊細さで再現している。マドンナとの仕事で知られるパット・レナードが全面的にプロデュースしているが、抑えめながらラジオでのエアプレイでも映えるに違いない手堅い演奏トラックと彼女の声のバランスを見事に保って彼女の歌唱を引き立てている。詞の内容は全体を通じて極めてパーソナルで、本作のエンディングを飾る母親との無伴奏のデュエット「This Little Bird」などはその極致。極めて心優しいプロテストソングである「Hands」、人にとっての純真さの重要さを訴える「Innocence Maintained」、自らの心の隙間を埋めてくれる者への真摯な「Absence Of Fear」など彼女ならではの清冽なメッセージを感じる曲も多い。2枚目にしてこの風格、ジュエルは王道を進む。(阿多)

 素晴らしい。初期のジョニ・ミッチェルを思わせる、この瑞々しく美しい楽曲群。音の鳴っている空間をそのまま切り取って額縁に入れて飾っておきたくなる。実はジュエルって全然好きじゃなかった。ヒットした曲は嫌いじゃないが、どうもあの媚びた甘ったれた声が好きじゃなかったし、1stアルバムは全然いいと思わなかった。が、「Hands」を聴いて私のジュエル観はぐらつき、本作で完全に魅せられた。1曲目の、この自信に満ちた歌声。可愛い声で囁くように歌っていたあの小娘は、ここまで成長した。曲の出来も素晴らしい。深みのある音を演出したパトリック・レナードの手腕も見事だ。「Deep Water」と「Life Uncommon」の確信に満ちた力強さと、繊細で美しいサウンドとメロディは、98年に生み出されたもっとも美しい音楽だと言っていい。ファーストはデモ的な自主製作盤で、これが本当のデビュー作、と言ってもいいぐらいまったく格が違う。ゴールドをとても上品に使いこなしたブックレットの美しさにも注目。(しんかい)
PIECES OF YOU (1996, Atlantic)



  不思議な魅力をもつシングル「Who Will Save Your Soul」をTOP20入りさせた女性シンガーソングライターのデビューアルバム(リリースは95年)。シンプルなバックがついた「Who Will〜」を除いてほぼ全編が弾き語り、しかもその約半数がライブ録音という非常に地味な印象の一枚。恐らくレコード会社のスタッフはアルバム制作に無駄な時間を費やさず、一刻も早くこの天才少女(録音当時19歳)の存在を世に広く知らしめたいとの判断からこういったリリースの形をとったのではないだろうか(単に予算がなかったという可能性も考えられるが)。で、その判断は概ね成功であったと思われる。シンプルな作りであるがためにかえって彼女のユニークなソングライティングのセンスと歌声が楽しめ、聴けば聴くほどその良さが解るような感じ。この作品でメジャーブレイクを果たした彼女のオールスタジオ録音による新作に早くも期待は高まる。全く余談だが、内ジャケのリリース当時の彼女の幼児体型(近年は随分改善された模様)フォトはその筋の好事家にはタマらんものがあるのでは。(八亀)


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