JAY-Z

MTV UNPLUGGED (2001, Roc-A-Fella/Def Jam)



 ♪あん、あん、あん、あん(ピヒャララ〜ララ〜)♪おお、よう来たな、俺がジェイZだ。又の名をホヴァ、その又の名をジガ、今日は俺のアンプラグド・ライヴを聴いてやってくれ。え?ラップのアンプラグドって何がアンプラグドなんだって?そりゃおめえ、いつもはDATとサンプラーとリズムマシーンでフロウぶちかますところを生バンでやるわけさ。あ?最近は70年代ソウルのシンセバンバンのサンプリング・トラックを多用してるから生バンはきついんじゃないかって?まあそりゃそうだがお前、今日のバックはルーツの連中だからそこんとこバッチシよ。ちょっとドラマチックさには欠けちまうけどそこはルーツの連中の技でカバーしてもらうって寸法さ。何?ルーツのバックにしちゃ俺のフロウが一本調子で今一だあ?選曲もヒット曲は多いけど耳慣れすぎちゃって新鮮味とか緊張感に欠けるだあ?お前ね、そういうことゴチャゴチャいわねえの。こりゃファンサービスで本気の俺は今売れてる『Blueprint 2』聴いてくれりゃそれでいいんだから。ビー(ビヨンセ)と俺とのドープなデュエット聴いてくれたか?あれだよあれ。まこのアルバムはどうでもいいからあれ買ってくれ。そこんとこヨ・ロ・シ・ク。ほんじゃな。♪あん、あん、あん、あん(ピヒャララ〜ララ〜)♪(ジェイZ)
THE BLUEPRINT (2001, Roc-A-Fella/Universal)



 始めに断っておくが、私はジェイZは好きではない。今まではっきり「好き」と言えるアルバムも、シングルもない。人間的には未だに好きではない。が、これは認めざるを得ない。ジェイZの6作目にあたる本作は、アメリカのヒップホップ・メディアだけでなく、世界中のあらゆる音楽メディアで大絶賛された。何が今までのジェイZと違うのか。何が、他のヒップホップ作品と違うのか。この作品の決め技は、ずばり「ノスタルジー」だ。今やサンプリングに使うための権利料は物凄い高額になり、よっぽどの金持ちじゃないと「公式なサンプリング」という行為自体ができなくなっている。そういう意味で、これほどサンプリング満載のアルバムは、超大物のジェイZにしかできないことだ。で、使ってる音源がいちいち涙腺を刺激する70年代ソウルなので、これが日頃はまともにヒップホップを聴かないオヤジリスナーをも魅了していると思われる。「Izzo」での大ネタの消化の仕方も、「Girls,Girls,Girls」のトラックの完成度にも参ったが、本当に凄いのは中盤「Heart Of The City」「Never Change」そしてトドメの「Song Cry」と続く3曲。圧巻だ。狙ってるのがミエミエなのだが、ついつい素直にハマってしまう。かつて、ヒップホップを聴いてこんな気分にさせられたことはなかった。多くのラッパーは、そのキャリアの初期に最高傑作を残す。異常なほどの多作ぶりで、ネタ切れになってもおかしくないジェイZが、6作めにしてこの傑作を創造したことには敬服するほかない。(しんかい)

 昔からずっと邦楽を追っかけていて、今でもモーニング娘。(というかつんく)とか評価しちゃってる音楽オタクのオジさんが、ある日突然聴いた「太陽にほえろ!」のトラックに乗せた無茶苦茶カッコいい新作ラップに感じるであろう陶酔感。ジェイZの今回の新作全体を流れるテーマに思わず揺り動かされてしまう70-80年代ソウルラヴァーとしてこのアルバムに感じる気持ちよさを別のアプローチで表現するとするとさしずめこんなことになろうか。ジェイZと言えば今のNYラップを代表するMCとして過去毎年年末に発売するアルバムでも年々「ヒップ」なトラックにいかにスキル溢れるフロウを乗っけるか、ということに精力を集中してきたはず。ところが今回のこのアルバムはガラリと雰囲気を変え、アルバム全体を覆っているのは80年代以前のサンプリング音源を70年代ブラクスプロイテーション・ムーヴィーを彷彿させるようなえらくクールに叙情的に駆使するジェイZの音づくりが得も言われぬデジャヴ感を与えてくれている。「Girls, Girls, Girls」(あのヘタクソコーラスがQ-ティップ、スリック・リック、ビズ・マーキーだというからサンプリングの多さと言い、このアルバムの金のかかり具合は尋常でない)「U Don't Know」「Heart Of The City」「Song Cry」と続く中盤などははっきり言って悶絶もの。「Takeover」なんかでナスをディスしてるなんていう余録の話題も呼んでいるが、このアルバム、ジェイZのスキルもさることながら、アルバムコンセプトの勝利と言える。しかしこの後彼は何をやるのだろう。(阿多)
THE DYNASTY: ROC LA FAMILIA 2000 (2000, Roc-A-Fella/Def Jam)



 ジェイZの5作目となる本作は、リリース前に音源が大量に出回ってしまったことで発売が遅れてしまい、それがセールスにも影響したようだ。激地味なジャケットもそのせいか?本作からのシングル「I Just Wanna Love U (Give It 2 Me)」はノリエガやケリスなどのイケイケ系アップチューンに定評があるネプチューンズのプロデュースが話題となりヒットしたのが記憶に新しいが、アルバムは全体的にキャッチーな曲が多く聴きやすい。最近は「Fiesta」での顔合わせがヒットとなったR. ケリーは「Guilty Until〜」でシルキーな歌声を聴かせる。リル・モーのヴォーカルが印象的な「Parking〜」もR&B風のチューン。「Stick 2 The Script」では控えめに「Under Pressure」をサンプリング。もちろんフロウも冴えていてスカーフェイスをゲストに迎えた「This Can't Be Life」やスヌープ・ドッグが参加の「Get Your Mind〜」ではじっくりとジェイZとのかけあいを楽しめる。ダイナスティ(=ロッカフェラ・ファミリー)による「You, Me,〜」ではさすがに息のあったマイクリレーが楽しめる。アミルの変な声はやはりインパクトあり。ラップ初心者にもおすすめできそうなわかりやすい1枚。(中村)
VOL.2....HARD KNOCK LIFE (1998, Roc-A-Fella / Def Jam)



 1997年後半に出た前作「In My Lifetime, Vol.1」の続編として1年の間を置かずにリリースされたのが本作。既にジャーメイン・デュプリをフィーチャーした「Money Ain't A Thang」が先行でヒットしてたので、「何か感じ違うぞ」的なイメージを持っていたところ、本作を聴いて思わず「うーむ」と唸った。イントロはプレミアを配してそれなりのハードコアを決めてるのだが、残りは全編これパフィも真っ青のセルアウト路線。しかしここでのセルアウトは決して悪い意味ではない。前作のグレン・フライのサンプリングあたりからその匂いはあったが、変にペダンティックなストイシズムをぶっちぎるような潔い芸人根性がここにはある。ミュージカル『アニー』のコーラスが快感の「Hard Knock Life」、DMXが気持ちよくがなってる「Money, Cash, Hoes」、今さらながらトーキング・ヘッズのリズムトラックが新鮮な「It's Alright」など、無茶苦茶判りやすく楽しめる。これがラップアルバム最長の5週全米No.1をマークした所以だろう。ごちゃごちゃ言わずにフロアで楽しみたい1枚。(阿多)
IN MY LIFETIME, VOL.1 (1997, Roc-A-Fella/Def Jam)



 昨年から至るところでフィーチャリングされまくり、以前のB級的なイメージからすっかり表舞台での活躍が定着した感のあるジェイZ。今回はその勢いを駆って、豪華なゲスト陣(ベイビーフェース、ブラックストリート)とプロデューサー陣(パフィ、トラックマスターズ)を配した贅沢な作品をドロップしてきた。スムーズなR&B寄りのバックトラックに例によって達者なフロウで、プレイヤ系の色あり金ありの世界のライムを展開している。従って内容的な好き嫌いは分かれるところだとは思うが、サウンドのテンションとクオリティはなかなかのもの。後半若干だれるところもあるが。『The City Is Mine』のようなパフィ・ライクな大ネタ使いは鼻に付くところもあるが、それ以外はサンプリングの趣味も良い。お薦めはここんとこ再評価のルネ&アンジェラの『Imagenary Playmate』使いでマスターPに対抗してプレイヤぶり全開の『Imagenary Player』と、パフィ卒業生のスティーヴィーJプロデュースで80年代的R&B趣味溢れる『Lucky Me』。この夏にリリース予定というVol. 2が早くも期待される。(阿多)


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