
|
今更このアルバムについて何を語る事があろうか。僅か4年足らずの間に咽頭癌、肺癌を経て脳腫瘍と立て続けに重大な病と闘う事になったビートルズ戦士が1970年に発表したロック史上、またジョージ本人にとっても金字塔とも言える一大大作が発売から30年の時を経て、デジタル・リマスタリングされ、また未発表曲を加えて生まれ変わった。もともとジョージのソロ・アルバムは楽曲により出来・不出来がはっきりしていて、どちらかと言えばシングルを集めていればそれですむと思っていたので、アナログ盤では3枚組にもなるこのアルバムには手を出していなかった。今回、このCDを手にしたのも、以前から聴いていた「All Things Must Pass」と、シングルのB面として持っていた「Isn?t It A Pity」をチャート曲収集の意味も込めて買おうと思ったくらい。まさに発売30年の後にこのアルバムに触れる事になった自分の浅慮に恥じ入る次第。初のヴォーカル・ソロ・アルバムはその経歴の中で最も鮮やかな輝きを放つアルバムだった。レーベルの関係から長くクレジットされていなかったが、エリック・クラプトンが参加し、他にもデイヴ・メイスン等実力者がしっかりと脇を固め、曲もビートルズ時代から書き溜められていたものの中から選りすぐられた曲にボブ・ディランとの共作(ディランの曲のカバーも含む)など実に充実した内容である。どこか頼りなさそうでいて、それでいて時に力強く、優しく、爽涼感を持って聞こえるジョージの歌声はまさにベスト。タイトル曲は、その輝きを失うことなく包んでくれたし、今回新たに入れられた5曲もアウト・テイクのはずなのに完成度はそこそこだし、特にこのミレニアム盤のために新録された「My Sweet Lord(2000)」は、ヴォーカルもサム・ブラウンに差し替えられ、原曲のアレンジをまったく代え、まったく別の曲のようになっている。中のジャケットも、昨今の環境問題と破滅への道を邁進し続ける人類への警告を込めて、高層ビルと有害物質を吐き出す大きな煙突群を加えるなど、2000年のこの時期にも飽くなき探求と人類平和と調和への強いメッセージが込められている。(小松)
|