MARVIN GAYE

WHAT'S GOING ON - DELUXE EDITION (2001, Motown)



 これは、ずるい。71年の名作アルバムの再発なんだけど、ボーナストラックがたっぷり。と言うか、全体の4分の3をボーナストラックが占めるので、完全に「別のもの」になっている。まず、ディスク1。まずは、もともとの「What's Going On」のアルバムが丸ごと収録されている。その後、同じ曲目が一通り繰り返される。別バージョンで。実はこのアルバム作成にあたっては、いちど全曲が録音されながらも全て没にして録り直されたという経緯がある。その、没になった通称デトロイト・ミックスが、今回全曲まとめて初めて日の目を見た、という形。  ディスク2は、ライヴ音源。まあ流石にこのアルバムからの曲目が多いが、別にこのアルバムのボーナスディスク扱いする必然性はない。更にここからカットされた3曲のシングルバージョンまで入れて、関連作品をすべて収録した完全パック。流石にMOTOWNが自らやってるんだし、値段が普通の2枚組よりは安いので、ディスク2はちょっと抱き合わせ販売っぽいが、あまり「変なものを売りつけられた」という感じはしない。本人が亡くなってから、当人がお蔵入りさせたものを発掘して、勝手にリリースするという行為については昔から疑問を感じているが、これは作家とか画家とか他の分野でも昔からやられてきたことなので、有名税として仕方のないことなのだろう。  とりあえず胡散臭いものではないので、このアルバムが好きな人は買い直す価値あり。(しんかい)
MIDNIGHT LOVE & THE SEXUAL HEALING SESSIONS (1998, Legacy / Columbia)



 どーも最近こういうオジサンの購買欲をそそる未発表曲集とかボックスとかがやたら出るので困る。とはいえ、昔アナログで聴いた愛聴盤『Midnight Love』が「20ビット・スーパー・ビット・マッピング(よーわからんが凄い)」による新マスターで、更にはそれが未発表テイク集との2枚組ともなれば買わずばなるまい。マーヴィンの未発表曲集では昨年の『Vulnerable』が素晴らしい出来だったのでなおさらだ。1枚目の『Midnight Love』の新マスター盤は名曲「Sexual Healing」を始めとしてさすがに音の粒立ちが素晴らしく、昔の感動が甦る。しかし、本作の値打ちはやはり2枚目に収められた、再起を期して丹念にスタジオ作業に没頭するマーヴィンの息遣いが聞こえてくるようなアウトテイクの数々だ。中でもマーヴィンの声が切れるような静謐さを持って迫ってくる全編アカペラの「Sexual Healing (Original Vocal Version)」の迫力は圧倒的。この1曲を体験するだけの為にこのCDを買っても決して損はない。(阿多)
VULNERABLE (1997, Motown)



 今さら何でMarvin Gaye、というあなたに「黙って聴いてご覧なさい」といいたいこの作品、マーヴィンの神々しいとも言うべき歌声にまず圧倒される。ライナーによると彼が1967年以来繰り返しレコーディングしてきた1930〜1950年代のバラード7曲の1979年の録音を収録したのがこのアルバム。当初今一つの出来だったこの7曲が、Marvinが最初の妻Anna Gordyとの悲惨な離婚やモータウンとの軋轢など辛酸の7 0年代の後の本作に収録されているテイクでは見事に美しい出来となっていたという。わずか30分強の小品ながら、この作品には歌い手マーヴィン・ゲイの最も美しいエキスが詰まっている。人間の歌声がそれ自体でこれほど美しいとは一つの発見。時を同じくして出版された紺野慧氏の「イナー・シティー・ブルース〜マーヴィン・ゲイが聴こえる」と共に、ポピュラーサイドからの黒人ボーカルに興味のある向きに心から推薦する。(阿多)


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