
|
この世には、死せる者の精霊に満ちている、という考えは、宗教の発生以前から洋の東西を問わず連綿としてある。その精霊にまつわる逸話に魅せられた者はこれまた多い。ならば、古い音楽を演奏することによって精霊を呼び出し、何事かを語らせようと考えた音楽好きはいるだろう。そこで、フェアポートやらライ・クーダーやらに代表される物好きが、十字架や秘術の代わりの楽器片手に、イングランドやらアメリカの田舎で精霊を降臨させ給う試みを飽くことなく続ける、ということに相成る。ロフト・ジャズのギタリストとして出発したはずのビル・フリゼールも、その群れに加わってアメリカのフォークロアをコツコツと再構築している。ただ、この男はイタコとして霊に語らせるわけではなく、その霊が見ていたであろう風景や空気を、聞く者に感じさせようとしているような気がする。その上で、現代とはどういう時代なのかを辿ろうとしているのではないか。このアルバムはキャリア15年にして初のギターソロ。オリジナルもカヴァーも、ひんやりとした静謐な空気にまとめ上げられ、そこには言葉のない言霊が漂っている。(Yaz)
|