FATBOY SLIM

YOU'VE COME A LONG WAY, BABY (1998, Skint)



 実はファットボーイ・スリムことノーマン・クックのやってることは、ハウスマーティンズ時代から一貫して変わってはいない。それは、音楽にどれだけ多彩な要素を盛り込むことができるか、という実験的精神である。その精神は、一見して単純な構成のように思われがちな、アイズリー・ジャスパー・アイズリーの曲をアカペラでカヴァーした、ハウスマーティンズ最大のヒット「Caravan Of Love」にすら当てはまる。ただ、ターンテーブルとサンプラーを手にしたことで、ハウスマーティンズでは並列的に配置されていたさまざまな要素が、ビーツ・インターナショナル以降は一つの曲の中で重層的に配列されるようになっただけなのではないか。そもそも、ノーマン・クックは、曲に思想を持ち込むよりも、「踊ること自体が思想である」という考えの持ち主であるように思う。巷で垣間見られる「ビッグ・ビートはマスコミのハイプだ」「ノーマン・クックは韜晦している」という論調は、踊ること自体の政治性をなおざりにした、肉体を伴わない空疎な主張のように映る。このアルバムは美しい。踊りやすい。だが最も重要な問題は、踊る自分がそれを武器にどう社会と対峙するかなのである。(鎌田)


copyright(c) by meantime 1998-2003 all rights reserved.
無断転載を禁じます。