| THE EMINEM SHOW (2002, Aftermath) |
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流行の移り変わりの早い昨今、99年デビューの彼はそろそろ飽きられる頃かと思った。ところがこのアルバムはほぼ前作並の勢いで売れてるし、主演映画とそのサントラまで1位になってしまった。飽きられているのは確かだろう。しかし、離れていくファンがいる一方で着実にファン層を広げ、新しいファンを獲得しているのだ。アメリカには2億6千万の人がいる。500万枚売れたとしても、全人口の500人に1人しか買っていない計算だ。年寄りと子供を除いても、まだまだエミネム・ファンの予備軍はいくらでもいる。
さて肝心の内容だが、新鮮味がない、予想通りの出来だというのが正直な感想だ。「My Name Is」「The Real Slim Shady」と続いた第1弾シングルのパターン通りの「Without Me」にはちょっとウンザリしたし、「'97 Bonnie And Clyde」「Stan」に続いてアルバムのハイライトとなるはずだった「Cleanin' Out My Closet」も、自ら使い古した母親ネタには、もういいよとしか思わない。親バカの「Hailie's Song」はほぼ全編を頼りない歌で通し、「My Dad's Gone Crazy」ではその娘自身を登場させる。なんだか、アメリカで着実にファンを増やしてるのがわかるような気がする。
アルバム冒頭から“言論の自由”に戦いを挑む「White America」や、汗や唾が飛び散ってきそうに熱くまくしたてる武闘派宣言「Soldier」なんていう秀作もあって、決して彼が腑抜けてしまったと断じるわけにもいかないのが憎いところだが、音楽的な面白さも、内容的な面白さも、前作には及ばない。次作では新展開を望む。逸材であることは間違いないので、このまま飽きられて、惨めな消え方はしないで欲しい。(しんかい)
遂に自身の名前をタイトルに掲げたエミネム3作目。現代のバッド・ヒーロー・アイコンとしてのキャラを存分に発揮しての毒舌は今回も炸裂しまくり。先行シングル「Without Me」での「俺はモンスターを作り上げてしまった。奴らはマーシャルでなくシェイディを求めているから」という一節のように、独り芝居で次々と繰り出される現実と虚構の綱渡りを楽しませてくれる。しかし私生活暴露ネタもちょっとマンネリ感があり、実娘ヘイリーへの親バカ感丸出しで歌ってしまう「Hailie's Song」、更にはヘイリー本人を登場させて「My Dad's Gone Crazy」を歌わせたり、これまで散々リリックの引き合いに出してきた母親に「傷つけるつもりはなかった」と謝罪する「Cleanin' Out〜」など最終兵器を出しつくした感があるのはやや心配。なんて考えてしまうのはやっぱり「エミネム・ショー」のトリックにひっかかっているだけ?ただし詞の世界でのエンターテインメントに止まることなく、今回もドクター・ドレーとの強力タッグで質の高いサウンドを聴かせている。「Say What〜」などでのレイドバック気味のトラックに緊張感みなぎるフロウの応酬はやはりこの組み合わせならでは。エアロスミス「Dream On」を大々的に使った「Sing For〜」でのロックへのアプローチは微妙なところだが1曲だけの企画ものということで。また「8マイル」サントラもヒットしているようだし、当分人気は安泰のよう。(中村)
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| THE MARSHALL MATHERS LP (2000, Aftermath) |
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暴力的で差別的なライムを撒き散らすエミネムを世間が批判する気持ちはわかる。しかし、サイコな殺人鬼を描いたサスペンスや、数十秒に一人の割合で人が撃ち殺されていくアクション映画といった暴力エンターテイメントを批判せずにエミネムだけを責めるのは間違っている。
彼の演技力、ストーリーテラーとしての実力を堪能できる「Stan」はもちろんのこと、一人の人間としての心の内を吐露したかのような「The Way I Am」に至るまで、ここにあるのは全てフィクションであり、演技である。題材が歴史的事実に基づいていようが、どんなに迫真の名演技だろうが、私たちがスクリーンの上に見るのは創作であり、現実ではないのと同じことだ。
大人は、自分が子供の頃に感じたことを忘れてしまいがちである。子供は、大人が思うほど馬鹿ではない。子供たちが真似をする。子供たちには善悪の判断がつかない。そう言って、親たちはエミネムを責める。善悪の判断を、常識を教えるという、親としての責任を放棄して。エミネムが悪いことを教えるから、エミネムを社会的に抹殺する。そうやって自分が「悪」だと思うものを片っ端から潰していっても、世の中から「悪」が絶えることはない。だから、悪を根絶やしにしようと試みる前に、自分の頭で善悪が判断でき、悪の道に染まらないような人間に、自分の子供を育てることが先決なのではないか。
目立ったが故にスケープゴートにされたエミネムは、ある意味被害者である。彼のスタイルが気に入らなければ、それはそれで仕方ない。しかし、安易に彼を責める前に、何故彼が責められなければいけないのか、根本的なところを考えてみるべきではないだろうか。(しんかい)
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ドクター・ドレが「Chronic 2001」を発表して再評価が高まったところにドロップされ、更にドレ大復活の決定打となったのが本作。もちろんエミネムとしてもデビュー作の後のセカンドがこのようにセールス面
でもグラミーでも大成功をおさめたのは見事。リード・シングルとなった「The
Real Slim Shady」こそ毒々コミカルキャラ丸出しなノベルティ色の濃い味付けをしているが、確かなフロウスキルに裏打ちされた一曲一曲はドレ&エミネム入魂の職人仕事。アルバムのアートワークにもリリックを綴るエミネムが見られ、賛否両論の独自の詞世界にまたも磨きをかけている。声色まで変えてのストーリーテラー然としたパフォーマンスははもはや演劇といっていいかも。別
れたり復活したりを繰り返す実際の妻に対する「Kim」でのテンションは聴いてて怖いくらい。一般
的には「Stan」での鬼気迫るフロウの評価が高いが、個人的にはこれでもかとたたみかけるヴァースが印象的な「The
Way I Am」がフェイバリット。これらの曲のバックトラックはみな内省的なトーンで、特にDidoの「Thank
You」をフィーチャーした「Stan」はエミネムとサビを歌うウィスパリングヴォイスの意外な相性の良さが際立つ。一方ミディアム・ファンク調の「Drug
Ballard」、エミネムが仕掛けたグループD-12も登場する「 U nder The Influence」などフロア受けのよさそうなトラック群も絶好調。Gファンク人脈を大量
導入した「B**** Please II」はドレらしいトラックでマイクリレーが行われ、エミネムの出番は少ないものの存在感は他ゲストに負けず。話題性が先行してはいるものの、内容もしっかりと2000年を語る上で無視できないアルバムに仕上がっている。
(中村) |