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EVOLVE
(2003, Righteous Babe) |

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前作のレビューでも触れたセントラル・パーク・コンサートでも当時出たばかりのこのアルバムからタイトルナンバーを含め何曲もプレイしていたので、改めて聴き返すと耳に馴染んだ曲が多い。でも、このアルバム自体は特にアニの音楽に慣れ親しんでいない人には決して取っ付きのいい作品ではないと思う。ここ数作と比べるとアコギよりもジャジーなバンドサウンドが主役の曲がいつになく多いし、使っているコードとかも敢えて不協和音的なものが多く、聴いていると小骨の多い魚を食った時のようにあちこちとひっかかりがある。アニの歌い方なんかもいつも以上にシアトリカルに迫ってきたり、ラップ的に凄みを聴かせて訴えて来たりと、技巧が目立つ。その歌にのせられている詞はといえば、この前のスタジオ作ほど直裁的なソーシャル・コメンタリー的なメッセージは見られないものの、全体的に暗いトーンで、現状打破を求める様を明かりにぶつかりながら飛ぶ蛾に例えたり(タイトル曲)、権力濫用と民主主義の堕落を嘆いたり("Serpentine")、報われない努力を雨の中の自転車に例えたり("Slide")と相変わらず言葉が表現を求めて吹き出しているかのようだ。変な例えかもしれないが、前衛ジャズと昔のプログレ(例えば『狂気』の頃のピンク・フロイドなんか)のような難解なメッセージがごった煮のようになった本作がそれなりに売れた事自体はアニの全米での支持具合を物語るものだと思うが、この路線をあまり突っ走ると先行きファンが付いて来れなくなるかも。9-11以降は肩に力の入ることも多いだろうが、もう少し音にも詞にも「間」というものが必要だと思う。アニ上級者向き。(阿多)
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SO MUCH SHOUTING / SO MUCH LAUGHTER
(2002, Righteous Babe) |

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今年の夏、NYのセントラル・パークでアニの野外ライヴを見るという体験をした。もちろん最小人数構成のバンドをバックに2時間強に亘って殆どの曲を得意の12弦ギター一本でバリバリとこなしたアニのミュージシャンシップにも大いに感動したもんだが、それよりもカルチャーショックを覚えたのは、聴衆の8割方が20代までの女性で、しかもおそらくその半分くらいはゲイと思われる少女たちだったこと。いやもうステージのアニにユニゾンで「You are beautiful!」と叫ぶし、そこら中で抱擁、接吻、身悶えるうら若き女性の群衆に中年オヤジの僕は目を洗われるような思いだった。そうか、アニの支持層は単にポリティカルでリベラルな彼女のメッセージに同期するファンだけでなく、凛々しいアニに別の意味でのリーダーシップを感じるこういう少女たちもその一勢力を占めていたのか、と(NYという土地柄も大きい要因だったんだろうが)。そういうエネルギーを受けたアニのライヴの魅力を惜しみなく詰め込んだこの2枚組のライヴは冒頭の「Swan Dive」の変調子アコギカッティングの格好良さから、ジャジーで憂鬱な緊張感に溢れる「Whatall Is Nice」から、優しいメロディに真摯なメッセージで聴衆の心に触れる「Gratitude」から、「ブッシュは大統領じゃなく、アメリカは民主国家じゃないし、あたしはメディアには騙されない」と激しく社会的なコメンタリーを聴かせる「Self Evident」でのポエトリー・リーディングまで、アコギと最低限のバンドサウンドと肉声だけで表現されるめくるめくような多様なアニの音楽性に触れることができて、とても聴いてて楽しい。アニを聴いたことのない人にも是非お薦め。(阿多)
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REVELLING/RECKONING
(2001, Righteous Babe) |

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ソロ・スタジオ作11作目となる本作は、アニにとって商業的ブレイク作となったライヴ『Living In Clip』(1997) 以来の2枚組セットとなった。この数作では彼女の12弦ギターをある時はパーカッシヴにある時は切れ味鋭く操りながら社会的・内面的な視点からの痛烈なコメントを訴える、というスタイルが前作『To The Teeth』やEP『Sw ing Set』でのメシオ・パーカーとの共演にも象徴されるブルージーなフリージャズ的サウンドコラージュなどと渾然となって、彼女のメッセージも今ひとつフォーカスされていなかったような気がする。そんな面がいい意味でも悪い意味でも出た「Revelling(享楽)」と彼女の従来からのスタイルに忠実にプレイされた「Reckoning (報い)」と名付けられた2枚のディスクのどちらを先に聴くかでこのアルバムの印象は随分と違ったものになるだろう。個人的にはフリージャズのサウンドビッツの海のような中にポツリポツリとメロディらしきものを持った曲が見え隠れして詞もどちらかというと感性に訴える内容の「Revelling」をまず聴いた上で、ほとんどアコギ一本でいかにも「アニらしい」ヒリリとした詞と歌と一体になったギタープレイが素晴らしい「Reckoning」を楽しむのがベストだと思う。何も彼女をステレオタイプに押し込むつもりはないが、エイズ患者と右傾する政府と大企業とのコントラストを歌う「Your Next Bold Move」、団結を標榜しながら人種問題で内部分裂を来すアメリカを痛烈に皮肉った「Subdivision」(9/11以降この曲をアニがどう考えているか興味深いところだ)、愛人と別れる苦渋の選択を火事の中片方しか救うことができないことが判っている 2人の子供を抱えた母親の苦悩になぞらえる「School Night」などとそれらの曲での高揚したギタープレイを聴くにつけ、良くも悪くも彼女の真骨頂はこれだ、と思わざるを得ない。「Reckoning」1枚だけの方がよりフォーカスされたいい作品になったのでは、というのが正直な感想。歌詞カードを読みながらじっくり味わって欲しい。(阿多)
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LITTLE PLASTIC CASTLE
(1998, Righteous Babe) |

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年間200回を超すツアーを中心にここ数年カルトな人気を積み重ねて来た、最近一部に注目を集める個性的な女性アーティスト、アニ・ディフランコ。全米でのメジャーブレイク前にいきなり来日公演してしまった彼女、どういう観客が集まったのかが非常に興味ある。というのも今回の新作を聴く限り、彼女の魅力はフォークを軸としレゲエ、ワールドミュージックなど多種雑多な音楽性を練り込んだテンションの高いサウンドもさることながら、彼女の詞があるときは社会的不条理をユーモアと共に痛烈に批判したり、またある時は自身レズビアンであることを題材に屈折した異性関係を描写する内容に観客がシンパシイを感じるからのように思えるからだ。P.サイモンの「Graceland」に聴かれた南アフリカのリズムを効果的に使ったタイトルナンバー、歌というよりもリズムに乗せたモノローグで皮肉たっぷりにマスへの迎合を批判した『Fuel』、刺激的なギタープレイをバックに不実な男への愛憎をシニカルに歌う『Gravel』など興味深い作品は多いが、彼女をちゃんと評価するには、彼女自身のレーベル、ライチャス・ベイブから既に出ている10枚のアルバムの幾つかを聴いてみる必要があると思う。このアルバムだけだと、サウンドはいいけどとんがった印象だけが先行してちと辛い。(阿多)
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