|
THE GREAT DEPRESSION
(2001, Ruff Ryders / Def Jam) |

|
このレビューがアップされる頃にはもう次のアルバムが出てるはずなので何とも言えないけど、あまり好評とはいえなかったDMXの4thアルバム。この不景気に大恐慌なんてタイトルがマズかった、というわけじゃないだろう。そもそも彼の登場はインパクトがありすぎた。おかげで似たような声質のジャ・ルールが二番煎じとか出来損ない呼ばわりされてしまうのだが、そんなジャは今では三の線に特化して女性ヴォーカルと共演という道でうまく生き延びている。ではDMXは?自分でも認めてるように、人前でうかつに笑顔を見せることもできないくらい強面でシリアスなイメージが定着している。こういう人はある程度マイナーな存在だったら凄みを持続できるのだろうけど、出したアルバム全部1位になってしまった以上、やっぱり売れなければカッコがつかない。最近は俳優としても人気が出たし。今回はフェイス・エヴァンスやステファニー・ミルズをゲストに迎え、今まで以上に歌ものの比率が増えている。それぞれの出来も悪くない。が、なんかDMXのイメージとは違う。実力はあるがどこか怖い上司がカラオケで楽しそうに歌っている気恥ずかしさというか。おまけにタイトさが身上だったはずのトラックも、曲がポップになった途端に単調に聞こえてしまう。今やメジャーなラッパーなら必ずポップ・チャートでの大ヒットを持ってるけれど、彼にはまだない。そんな焦りがアルバムのバランスを崩しているような気がする。(松本)
|
|
FLESH OF MY FLESH, BLOOD OF MY BLOOD
(1998, Ruff Ryders / Def Jam) |

|
アルバム1枚出すのに3年かけるのが当たり前の昨今、メジャーな人が1年に2作出すのって、すっごく久し振りのことだと思う。しかも両方初登場1位だよ。私はDMXはかなり好きだが、アルバムはあんまり聴かない。今聴き返してみると「濃すぎる」のがその原因のようだ。とにかくクドい。他人の作品とかにゲスト参加してるのを聴くと「おーやっぱDMXかっこいいぜ!」と盛り上がれるが、アルバム全編この調子はクドい。1stのブロンズ像のようなジャケはめちゃかっこ良かったのに、今度はこれだし(インナーにも延々と血まみれ姿が続く)。なんか2nd以降迷走しまくってるナスを思い出さずにはいられない。センスあるし、かっこいいんだけど、アルバムはちょっとね...という。冒頭で長々と神に捧げる詩が朗読され、本編も神との対話のような内容になっているラストの曲や、コケ脅し大魔王のマリリン・マンソンがゲスト参加した曲など、ちょっと安っぽい演出が目立つ。この人はとにかくラップのセンスが素晴らしいので、正当派で活かしてやって欲しいなあ。(しんかい)
|
|
IT'S DARK AND HELL IS HOT
(1998, Ruff Ryders/Def Jam) |

|
このところ同じようなラッパー、同じようなサウンドばかりで停滞気味だったラップ・シーンに、やっと強力な新人が登場した。独特のしゃがれ声で、勢いのあるライムフロウだが、妙に落ち着いたところがある。ぎゃーぎゃーわめきたてるチンピラよりも、落ちつきはらったギャングのほうが実はおっかないのと同じで、この新人離れした「落ち着き」が、こいつはひと味違うんじゃないかという期待を抱かせる。キャラが立っている。デビュー直後からゲスト・ラッパーとしてあちこちで引っ張りだこなのは、その貴重な個性のお陰だ。
アップテンポのファンク色の強い曲ほど彼の独特のスタイルが活きる。絶妙の掛け合いで、つんのめるような勢いのある1曲めだけで、もうDMXの世界に引きずり込まれる。残念ながら、ついつい早送りしてしまうような退屈な曲もあるのだが、いい曲の水準は極めて高い。アルバム全体を通して傑作だとはちょっと言えないが、98年のラップの最良の作品のいくつかがここに収録されているのは間違いない。(しんかい)
ヨンカース出身のMCのデビュー作。DJ Clueのミックステープで同郷の友人であるLoxと共にローカルデビュー。シングル「Get At Me Dog」がクラブ,ラジオの両方でへヴィローテーションとなったことは98年に登場した多くのソロMCの中でも一歩抜きん出た存在として記憶されるだろう。実はDMXは本作の発表より遥か以前,91年にThe SourceのUnsigned Hypeに選定されているのだ。そして,評判を聞いたColumbiaとディールを結んだものの,アルバムのレコーディング前にそれが破棄されてしまったという複雑な過去を持つ。DMXは,幸いなことに後にその才能を認められてLL Cool J,Mase,Mic Geronimoといったメジャーアーティストのレコーディングに参加,名前を売りまくり,本作の発表にこぎつけたという。そうした経緯からだろうか,積年の想いが積もり積もったDMXのフロウは爆発しそうな迫力がある。ラジオでエアプレイされそうなポップた曲構成とメリハリの利いたフロウの妙が小気味よい快作。(信沢)
|