
|
『アンフォゲッタブル』以降のナタリー・コールはそれまでのポップ・R&B路線から大きく方向転換して、ジャズ系のアメリカン・スタンダード・ナンバーやクラシック・ポップ・ソング等をディナーショーのスターよろしく歌ったアルバムを出し続けて来たわけだが、2000年代に入ってジャズ/スタンダード・ボーカル系の代表格とも言えるヴァーヴ・レーベルに移籍、そのアプローチを更に次のレベルへと進めてリリースしたのがこのアルバム。この作品でナタリーがその達者なボーカルで歌うのはビッグ・バンド系のサウンドでエディ・フィッシャー、ダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドといったジャズボーカルの先達の歌で知られる数々のジャズ・スタンダードボーカルの有名曲だ。バックはジョー・サンプルらベテラン・ジャズ・ミュージシャンが固め、録音は名手アル・シュミット、そしてプロデュースはこの手の音を扱わせたら天下一品のトミー・リピューマと役者は揃い過ぎるほど揃っているから、ナタリーの伸びやかでサシーなボーカルが耳に心地よいこのアルバム、出来が悪いわけがない。映画『バクダッド・カフェ』の挿入歌「Calling You」だけが唯一ミスマッチだが、それ以外は完璧。カクテルタイムのBGMとして最高なこのアルバム、ロックファンにはあまり縁のない音楽かもしれないが、現代ポピュラー音楽の一つの昇華された形として評価すべきだし、その価値あるクオリティのパフォーマンスが堪能できる作品だ。ダイアン・クラールとのデュエット曲あり。(阿多)
|