BUSTA RHYMES

GENESIS (2001, J)




 心機一転J RECORDSに移籍してのバスタの4thアルバム。デビュー当初の95年はガナったり吠えたりする芸人系ラッパーはあまりいなかったので、それはそれは珍しがられて面白がられたりもしたバスタ。しかしアルバムも4作目ともなるとさすがに同じ調子ではやっていない。まずそんなに吠えてない。そして前々作の頃まで感じられたファミリーだけで閉じられたような空気が全く無い。輪をかけて驚くほど芸風が広くなった。時にはささやき、時にはボンサグ並の速射ラップを見せ、またある曲では息継ぎすることなくひたすら抑揚なく喋り捲る。これはかなりの進化である。昔のバスタを知る人にはバスタがバスタでなくなったと嘆く向きもあるかもしれないが、そんなことはない。それはあなたが彼の追求する笑いを誤解しながら聴いてきただけであって。毎回毎回観客の入れ替わるお笑いライヴ。時には老人ばっかり。時にはどぎついヤンキー集団。はたまたお金持ちの奥様方。様々な客の前でそれぞれの客を楽しませるために考えられた笑い。今回のアルバムは芸人バスタが客である有名無名のトラックメイカー達(のつくる多種多様なトラック)とガチンコでぶつかり合う感動のドキュメント大作である。(はまべ)
ANARCHY (2000, Elektra)




バスタの世紀末シリーズ、前作のテーマが「絶滅」なら今回は「無秩序状態」ときた。イントロのニュースアナウンス風のスキットはややありきたりだが、トラックがスタートするやいきなりスタイリスティックスのトラックに乗ってバスタのいがらっぽいフロウが飛び出してくるんで結構度肝を抜かれる。前作で確立されたありきたりなヒップホップトラックではなくモンド系でもピコピコでも極東系でも何でもアリの縦横無尽のトラックに乗っかるバスタのフロウは今回も絶好調。シングルヒットなどとも今回は無縁、レニクラやレイクウォン/ゴーストフェイス・キラーといった骨太の連中との共演やQ-ティップやスイズ・ビーツといった応援組の作るトラックも全てバスタ色で完全に塗り込めるこの豪快なアルバムは「ウーハー!」でブレイクした時の勢いに肉薄するものがある。前作から今回の間にフリップモード・スクワッドのお披露目、「Bushi」ブランドの旗揚げなど音以外のお仕事に忙しかったはずだが、このクオリティはさすが。新しいヒップホップのパイオニアとしての活躍、当分は安心して期待できそうだ。(阿多)
E.L.E.: EXTINCTION LEVEL EVENT: THE FINAL WORLD FRONT (1998, Elektra)



 ゴジラの次はガメラだ。前作からあまり間を置かずにリリースされたこのアルバム、往年のガメラ対××のシリーズ映画のような次から次に出てくるお約束のお楽しみ満載で、ストイックなトラックが目立った前作とうって変わったエンターテインメント性が楽しい。だんだんおどろおどろしくなっていくバスタの声が怖いイントロの子供との会話やドウプなバスタの音楽を毛嫌いし、「あたしゃサミー・デイヴィスJr.の方がいいよ」と毒づくお母ちゃんが登場するスキットなどのお遊びから、絶好調のガナリ男ミスティカルとの丁々発止やあのオジー・オズボーンとの腹にこたえる狂演など、重量級のバトルが次々と繰り広げられ、あたかもガメラとギャオスが肉弾戦を戦わせる様子を観戦するがごとき快感がある。しかし見逃してはいかんのが跳ねるリズムが気持ちいい「Gimme Some More」や奇妙な快感を呼ぶジャネットとの共演曲「What's It Gonna Be」、はたまたモンド系のサンプリングや琴の音など縦横無尽のトラックに乗ったバスタのフロウの充実ぶりだ。止まるところを知らないバスタのパワー満載のこのアルバム、元気のいい日に聴くことをおすすめする。(阿多)

 この人は,目立ってジャンルを越境するような活動を行っているわけではない。だが,このソロ3作目の製作過程において,彼の頭の中ではヒップホップをやっている概念はとうに消えていたハズだ。本作に聴かれる,ストリングスの使用やハードロックをネタにするといった異端的な事象は目先を変えるといった枝葉末節的な目的から出てきたものではないだろう。もっと深い意識の中で異種混交音楽を生み出そうとした結果の発露がそうした具体的なものとして表現されているのである。世紀末を混沌の時期というのなら,98年にこれほど相応しいアルバムは他にあるまい。もっとも,印象として残るのはヒップホップ,というところは紛れもなく現代においてヒップホップこそが時代を映す器としてアメリカに深く浸透し,機能している,という事実を思わせるのだが。すでに誰にも真似のできないスタイルを確立し,大いなるポピュラリティと評価を獲得している人間がこのような斬新なアルバムを発表することに世紀末的な匂いを感じるのは筆者だけではあるまい。(信沢)  
WHEN DISASTER STRIKES... (1997, Elektra)



 本作は、前作で一躍メジャー・シーンに躍り出た怪人バスタによる、自分を中心とした従兄弟のランペイジ、ロード・ハヴ・マーシー、ラー・ディガその他大勢を含む一派「フリップモード・スクアッド」のお披露目アルバム、といっていい。そのハチャメチャぶりは健在ながら、得意の絶叫はなく、全体的なにはむしろ淡々としたトラックをバックに、緊張感溢れるパフォーマンスを聴かせている。といっても、ウータン的に極限までそぎ落とされたコアなサウンドではなく、かなり作り込んだトラックながら、表面的にはオーヴァー・プロデュースにきこえない、という絶妙さ。だから何回か耳を通さないと伝わらないが、本作製作に当たってスタジオに自らこもりっきりだっただけあって完成度は結構高い。象と駆けっこをするビデオでお馴染みの『Put Your Hands Where My Eyes Could See』やシングルの『Dangerous』など一定のパターンで繰り出されるバスタのライムがパーカッション的に心地よい曲から、ウマーのプロデュースによる、トライブサウンド全開の『So Hardcore』、エリカ・バドゥとの掛け合い『One』まで聴き所は多い。ハイライトはフリップモード軍団総出演の『We Could Take It Outside』。イージーリスニング風のサンプルをバックにマイクバトルが楽しめる。(阿多)
THE COMING (1996, ELEKTRA)



リーダーズ・オブ・ザ・ニュー・スクール(LONS)時代からその存在感の高さで独り我が道を行くという感じだったのがこのバスタ・ライムスである。そのキレまくり方はもうお馴染みだが、「Woo-Hah! Got You All In Check」で聴けるようにオール・ダディ・バスタードにも匹敵するそのバ○っぽさ(「Woo-Hah!」のリミックスでは本当に二人の競演が聴ける)はこの待望のソロ作でも大全開だ。Qティップに任せてみたり、ヒップ・ホップ・ソウルがあったり、LONSのメンバーを揃えたりといろいろ演っているがバスタのパフォーマンスはやはり周囲を圧倒してしまう。何かにつけて大袈裟な表現をする彼だが、眉間にしわ寄せて真面目に反論する気になれないのはその愛すべきキャラクター故のこと。参考までに動いているバスタを見たいという奇特な方は映画「ハイアーランニング」他数作で彼の怪演・奇演ぶりが堪能できるので今すぐレンタルビデオ店へ走るべし。(信沢)


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