GARTH BROOKS

SCARECROW (2001, Capitol Nashville)



そういえばこのアルバムの後、引退して子供たちの親父として過ごす、と言ってたのだけどどうなったのだろう。というか、こういうソリッドなアルバムを出してそんなに潔く引退なんてできるんかいな。ガース・ブルックスという男はネオ・カントリーの旗手みたいにブレイク当時から言われ続けてきているのだけど、この男、かの悪名高い失敗作『In The Life Of Chris Gaines』でもその本質をあらわにしたように、実はポップベースのミュージシャンシップを持っていて、書く曲や他人の曲の料理の仕方なんかにはビートルズ、イーグルス、エルトン・ジョン等々といった60〜70年代の超メジャーポップスターたちの影響をはっきりと窺わせる瞬間が多い。前作『Chris Gaines』で自分のオルター・エゴとしての架空のポップ・スター、クリス・ゲインズを演出して見事にこけたことや、長年連れ添った高校時代の同級生だった愛妻との離婚など2000年以降暗いことの多いガースが久々に発表したこのアルバムはそういうガースの側面がプラスに働いたか、ガースの作品に触れたことのないポップファンはもちろん、従来からのファンにとってもびっくりするくらい各楽曲の粒の揃った佳作に仕上がっている。
 彼らしいポップ・センスは、例えばアメリカのヒット曲「Don't Cross The River」のブルーグラス・アレンジや、マイケル・W・スミスやエイミー・グラントらとの仕事で知られるウェイン・カークパトリックのペンによる弾けるようなビートルズエスク・アコースティック・ナンバー「Wrapped Up In You」なんかに特に顕著だが、こういった「カントリー」という枠を越えた曲を軸に王道ポップ・カントリーなナンバーも貫禄とさりげなさで聴かせるところはさすが。あの9-11を意識した、内省的で思索的なバラード「Thicker Than Blood」などあの事件を経て家庭・絆への価値観を深めたいちアメリカ人としての呟きとして静かに胸に訴えるものがあり、表現者としてのガースの力量も再認識させてくれる。ガースにカントリー、というレッテルを貼りがちな普通のポップファンに一回聴いてみて欲しい。その辺のマスプロ・ポップに最近食傷気味というあなたに。(阿多)
THE LIMITED SERIES (6CD) (1998, Capitol Nashville)



 900万枚、1600万枚、1300万枚、800万枚、800万枚、600万枚。Garth Brooks、過去6枚のオリジナルアルバムの売上枚数である。この1枚1枚に1曲ずつ新曲をプラスして、ボックスセットにしたのがこの「The Limited Series」、限定200万セット。これが売られている間オリジナル盤が一時廃盤になること(ディズニーのマネだそうだ)や、ボックスセットとしては破格の安値とはいえまとめ売りにこだわることなど、商売上手なところばかり話題になっているのだが、Garth側としてはあくまでこれはファンサービス、という視点が大きいらしい。シングルカットはBilly Joelもベスト盤で歌っていたBob Dylan作の『To Make You Feel My Love』。映画「Hope Floats」のサントラにも収録され、彼にとって初のカントリー以外でのヒット(アダコンチャート)となっている。ところで、彼のライヴは、インカムつけてステージを所狭しと駆け回り、あげくギターをぶっ壊すというロックアーティスト顔負けの激しいもの。ビデオも出てますので、機会があったら是非見てみてください。先入観吹っ飛びまっせ。(寺本)
DOUBLE LIVE (1998, Capitol Nashville)



 Garth Brooksという人が話題にのぼるとき,その音楽性が語られることはほとんどないといってよい。彼が話題にされるのは,いつもその驚異的な売り上げ枚数のことばかりだ。しかし,考えてみてほしい。ロクな曲も歌ってないようなアーティストのアルバムが,10年間で8200万枚も売れたりするか?彼の歌は,まちがいなく多くのアメリカ人の琴線に触れ,愛されている。その何よりの証拠として,このライヴアルバムは存在するのだ。一聴して驚くのは,ファンの熱狂ぶり。ロックのライヴかと耳を疑うほどだ。いや,客だけではない。歌うGarthのノリもまた,ロックシンガーのそれと何ら変わるところがない。彼がシンガーとして,ソングライターとして超一流かどうかは私でも正直疑問だが,このアルバムを聴く限り,超一流のエンターテイナーであることは疑う余地がない。おそらくこれこそが,彼の異常人気の大きな要因なのであろう。小売店も不平をもらす定価の安さ,ジャケ写を7種類も用意する(Cherがお手本だそうだ)など,内容的にもライヴなのに歓声が曲ごとにフェイドアウトしてしまうとか,スタジオ音源で加工した部分がある(本人さえ純粋なライヴアルバムであることを否定する)など,ファンの私でさえ文句をつけたいところもある。しかし,「90年代アメリカ音楽界最大の衝撃」としてこの10年を駆けぬけた男の記念碑とも言うべき2枚組に,感動は尽きない。収録25曲中ナンバーワン17曲と代表曲もオンパレード。一度も聞いたことがない人には,オリジナルやベスト盤よりもこれを入門編としてお薦めしたい。そして,しつこいようだが,でえきることならライヴビデオを見てほしい。その時,これだけほめちぎったこのアルバムが彼の魅力の半分しか伝えていないことがわかるはずだ。(寺本)
SEVENS (1997, Capitol Nashville)



 アメリカのポップミュージックを代表するアーティストの一人ガース・ブルックスの新作。彼の場合“アメリカン・カントリーの代表選手”という印象が強いが、実際にレコードを聴いてみるとカントリーをベースとしながらも非常にコマーシャルなロックの要素を多く取り入れており、その音楽性は様々な要素が入り交じった“アメリカ大衆の好みに合致したポップミュージック”と言ったほうがいいような感じ。ジャンルの融合によりマス・セールスを勝ち取った彼の活躍は、卑近な例を挙げれば日本のロックバンドたちがその音楽性をいわゆる歌謡曲と区別がつかない位のところまで変化させていった結果、爆発的なセールスを獲得した過程に通じるような気もする。本作でもその基本路線は変わらず。ただ伝え聞くところによれば(僕には判らなかったが)これでもカントリーに回帰している方なのだそうだ。非常に聴きやすい反面、メインストリーム音楽特有の面白味のなさを持ち合わせている点は否定できない。(八亀)


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