MARY J.BLIGE

NO MORE DRAMA (2002) (2002, MCA)



 2001年に発表された彼女の5枚目のオリジナルアルバム『No More Drama』の新装版。最近この新装版とやらがやたらと多い。シングルヒットしたリミックスバージョンを収録したり、ボーナスCDを付けたりして、まだアルバムを購入していない人はおろか既に買っている人の購買意欲をも膨らまそうという意図だ。しかしこのアルバムに関して言えば若干事情が違うのかもしれない。アルバムのタイトルチューンでもある「No More Drama」が2ndカットとしてヒットしたが、その曲の続編とも言うべき「No More Drama [remix]」が作られた。このリミックスはタダ単なるリミックスではない。詞の内容もきちんと意味を持って差し替えられている(これについてはシングルレビューを参照されたい)。絶縁していたPディディとの久しぶりの共同作業。そしてこれをアルバムに収めることにより彼女の"No More Drama"は完結する。何とも革新的ではないか(否確信的)。カバージャケでピンクに身を包んだ彼女はとても可憐で凛としていて、第2の人生への決意みたいなものを充分に感じとることが出来た。だから敢えて言わせていただく。「Rainy Dayz」のような楽曲はこの中に入れて欲しくなかった。そしてシングルヒットするべきではなかった、と。(はまべ)
NO MORE DRAMA (2001, MCA)



 実は、『Mary』が結構気に入っていた。『What's The 411?』で一躍スターダムに上り詰めた女性が、その後どのような紆余曲折を経て現在に至ったかを、何のてらいもなく表現した、極めてパーソナルな内容のアルバムだったが、その表現方法に嫌みがなく、とても好感が持てた。が、バブル最中のアメリカでは食いつきがもうひとつだったようで、さっそく、軌道修正したかのようなアルバムがリリースされた。重心の低いトラックに自らラップを乗せる序曲に続いて、6週間全米No.1というキャリア最大のヒットを記録した "Family Affair" は、Dr.ドレーによるミディアムの重いエレクトロ・ファンクと、かなり旬を意識した作りとなっている。続くトラックも、アルバムの統一感よりもあらん限りの意匠を凝らした曲ばかりで、豪華というか、幕の内弁当のような内容と言える。中でも、バリー・デヴォーゾンの「妖精コマネチのテーマ」を倍速サンプリングした、ジャム&ルイスによるタイトル・トラックがひときわ目立つ。そして、ここでも音楽的なルーツは80年代のエレクトロ・ファンク。ひたすら弾むボトムにキー外し気味のシンセやギター。ドレーやミッシーなどが近作で追求してきた路線だ。ついでに、モダン・ゴスペルの要素も少々。ということで、狙いはまったくハズしていないのだけれど、個人的にはやはり、『Mary』の方にシンパシーというかインティマシーを感じてしまう。ワタシはやはり、彼女の“歌”を聞きたいんですね。これはもちろんハマのメアリー・Jさんにはまったく責任の及ばないことで、たぶん出来はこっちのほうがいいんだろうけど。(Yaz)
追記:本稿脱稿後、一部の曲の差し替えとリミックスが行なわれたニュー・ヴァージョンが発売されたが、原稿を書き直す時間的余裕がなく、言及できなかったことを申し添えておく。
THE TOUR (1998, MCA)



 昨年4月のカリフォルニアはユニヴァーサル・アンフィシアター(よくグラミーとかやってる)でのライヴを収録した、まさしくメアリーJの汗の飛び散る様子が想像できる結構生々しいライヴアルバム。一昨年のエリカ・バドゥのライヴ・アルバムが極めて静的ながら一種独特の緊張感を感じさせるパ フォーマンスだったのと実に好対照で、いかにものMCに始まり、これぞ全力投球!これぞソウル・レビュー!といった感じの力強くしなやかなメアリーJのパフォーマンスがやたら気持ちいい。また自分のヒット曲と「All Night Long」「Summer Madness」「Daydreaming」といった聴衆のツボを掴むカバー曲を殆どメドレー仕立てで続けざまにぶつけてくるこのサービス精神たるや素晴らしい。最初聴いたときは「何だかえらく音の悪いCDだな」と思ったが、聴き返すうちにそれが逆に全体のショウのロー(生)な魅力を引き立てる要素になっているのが面白い。パフィと袂を分かってからの彼女は若干往年の存在感が薄れがちだったが、このライヴを聴く限りまだまだパワー健在、次作が今から楽しみだ。(阿多)
SHARE MY WORLD (1997, MCA)



 Sean "Puffy" Combsらと縁を切って心機一転、前作「My Love」から約3年ぶりの新作は、難を言えばそつなくまとめすぎの嫌いはあるが、文句なし注文通りの快作。最近のヒップホップ界の新勢力とは一線を画すこの貫禄は何だかんだ言っても大したもの。そつのない音作りはRodney JerkinsとPoke & Toneを軸にBabyface、R. Kellyらゲップの出る面子を揃えた万全の製作陣のせいもある。一方で、以前からのファンにはネチッとした彼女独特のグルーヴが今一で、物足りない向きもあろう。Nasのからむようなフロウにのせた存在感溢れる「Love Is All We Need」、R.Kellyとの共演が何とも官能的な「It's On」、Natalie Coleの正統リメイク「Our Love」など聞き所に困らない本作はMary Jの世界に親しむにはいい。今まで彼女のアクの強さがちょっと、と思ってた人に薦めたいアルバム。(阿多)

 一般リスナーからすれば本作に対する興味はズバリ、「Combsという後ろ盾のないMary J.がどこまでやるか?」対して、明らかにBe Happyを意識したJam &Lewisの3にはよくぞここまで、という感じ。彼等の先輩プロデューサーとしての意地、Mary J.本人としては「Combsがいなくても平気」という意思が絡みあったものだろうが、やり過ぎの感があり。同じJam & Lewisでも11はSoloでも披露した二曲繋ぎ合わせ技がハマってずっと彼ららしい。結局、前作までのイメージを崩すことまでは踏み切れなかったのだろう。アルバム全体を見渡すまでもなく、冒頭にはTrackmastersが参加する作品でよく聴かれる彼らの登場宣言が。イメージ的には制作陣が全く入れ替わったようだが、実はこのTrackmasters他顔馴染みの参加者もチラホラ。他にもJames Mtumeら歌モノに抜群の冴えを見せるチームが入ったためか(Babyfaceは×)、前作の延長線上にある作風という意外な結果。Mary J.が思ったより変わらなかったことに嬉しいやら物足りないやら複雑な心境である。(信沢)

 んまあーお宅のお嬢様ったらお上品ですこと。いつからこんなんなっちゃったんだMary J ? 彼女はデビュー当初から「女王」なんて呼ばれたようにR&Bの世界では非常に正統派の音で、イメージも洗練されていた。「こいつは何かやってくれそうだ」という期待を感じさせた。たしかに、それが行き着く末はこれしかないのかもしれない。王道。3作目にしてもうやることなすことすべて極めてしまった。何しろスタッフも優秀な人材をごっそり揃えてるからまったくソツがない。スキがない。だから、つまらない。皮肉な結果になった。ブランド物に身を包むジャケ写通り、「Mary J.Blige」はひとつのブランドになってしまった。きっとJ-WAVEリスナーなんかはこういう音が好きだろうから、今後も「マス」である彼等に支持されて安泰だろう。でも私の中では、もう彼女も終わってしまった気がしている。否定的な書き方をしたが、逆に「それなら俺、聴けそうかも」という人もいるでしょ?(しんかい)


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