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前作『Odelay』で一気にメジャーブレイクしてしまったベックの新作は、前作のようにおもちゃ箱をひっくり返したように、カントリー、ヒップホップ、ジャズといった様々な音楽の要素がごった煮的に煮こごっている世界を予想して聴くと、見事に肩すかしを食らわされる。何だ、今回は結構フツー
じゃん、と思って聴き進むとこれがどっこい、ラウンジ風の曲あり、ボサノバあり、アコースティック・ギターによるラグタイム風の小品あり、といった風で実は結構バラエティに富んでいたりする。あれだけ売れたアルバムの後で、いかにつなぎのプロジェクトとは言えこういったいろんな音楽性を閉じこめた作品をしれっと出してしまう辺りやはりベックただ者ではない。前作がサージェント・ペッパーとすると、本作はホワイト・アルバムのような、音楽性の多彩さと楽曲の緊張感と奇妙なカタルシスを聴く者に与えてくれる作品だ。いやしかしこのアルバムは聴くほどに気持ち良さを増して、結構癖になるぞ。(阿多)
メジャーからはウケ易い再構築サウンド,マイナーからはシンプルな歌志向の作品,とルートを使い分けてきたBeckが遂にそのパターンを破る冒険に出た。本作はNigel Godrichのスペーシーな感覚溢れる透き通ったプロダクションが実に新鮮だが,それよりもBeck自身の変化をどう捉えるかが重要だ。「Odelay」との比較で言えば,コンソール卓で遊んでいるかのようなエレクトリックな要素がなくなり,シンプルなサウンドをバックに歌をじっくり聴かせているのが特徴。同様の趣向のものとしてはBong Loadから出た「One Foot 」がマニアの間で好まれているが、それもBeckなりの計算の上でマイナーからリリースされている。となると本作は実績が出来て余裕が出てきたところで自分のやりたいことをより多くのリスナーに届けたくなった結果生まれたもの,と考えるのが筋であろう。「Odelay」もゴチャゴチャした装飾の下に味わい深い歌が顔を覗かせていたのも事実である。だが,そのソングライター的資質をメジャー展開したという点で,彼の長くはないキャリアの中で本作がエポックメイキングなアルバムであることは間違いない(不思議なことにBong LoadからはLP版がリリースされている)。(信沢)
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