|
いやすごいなしかしこれは。もともとデビュー時からあまり既成の枠には入ってなかったけど作品を追うごとにどんどん枠から加速度的に外れていくのが快感だ。デビュー時はただのヒップホップ・パンク野郎で片づけられたが、今や彼らを一単語で表現することは困難だ。オフィシャルな前作『Ill Communications』でサウンド・コラージュ的手法を実に気持ちよくひねくり回したトリップ・ミュージックを実現した彼らだが、今回の作品はトリップ・ミュージック以外の何ものでもない。このアルバムを捕まえてストリート感覚の希薄さを云々するよりも、彼らがぶっかけてくる音のごった煮を頭から浴びてトリップ感覚に浸るのが適当な楽しみ方のように僕には思える。彼らのいまだに素人くさい掛け合いパターンのがなりラップも、時折挟まれるラウンジ系のサウンドや中近東的なサウンドも、突然登場するリー「スクラッチ」ペリー先生も、全て快感レベルで処理すればこんな楽しいアルバムはない。こういうのが1位になるくらいだからアメリカもまだ捨てたもんじゃない。グランド・ロイヤルの快進撃、当分続きそうだ。(阿多)
前作『イル・コミュニケーション』が出たのが94年。4年ぶりの新作のはずだが、パンク大会のEPやらマネー・マーク全面参加のインスト集やらがその間に出たし、自身のレコード会社や雑誌「グランド・ロイヤル」も好調に活動しているし、アダム・ヤウチがチベタン・フリーダム・コンサートを開催したり、ついでに、日本にしばしばやって来てはクエイサー名義のライヴをやったりレーベルのイベントをやったりで、ちっともごぶさた感がない。それだけ、音楽シーンが彼らを中心に回ってきていることなのだろう。このアルバムもそうした世間の期待に違わない出来である。ただし、音楽的には若干の変化が生じている。まず、『チェック・ユア・ヘッド』あたりと比べると、ストリート感覚は明らかに後退している。それが悪いというワケではなく、ヒップホップという狭い範疇に自分の音楽が入り切れなくなってきたことだろう。また前作と比べても、ザラッとした感触は薄まり、その代わりにより洗練された印象が強まり、モンド趣味やラウンジ感覚が目立っている。そうした様々な要素を切り貼りした編集感覚は、彼らの作る雑誌にも通じている。ただし洗練はほどほどに。(鎌田)
|