ASIAN DUB FOUNDATION

COMMUNITY MUSIC (2000, FFRR/London)



政治と音楽との関わり合いについて、否定的とはいかないまでも、音楽が政治と関係するのを快く思わない人は結構多い。ロックが政治に引きずり廻された1970年前後の影響が、いまだに深く影を落としているからだろう。“We Are The World”の陳腐なメッセージがロックの美学に疵を与えた、ということもあるだろう。が、普段の生活において、政治と無関係であろうとしても、政治のほうはお構いなしに我々の生活にずいずいと入り込んでくる。まして、自分が「移民」という、それ自体が政治的な存在であるならなおさらだ。メンバーが移民である以上、このバンドが政治的であることは、むしろ自然なのである。その上で、演奏に強烈なグルーヴを与え、踊ること踊らせることで自分たちの肉体を自覚させ、その肉体を足場に自分たちの思考を発展させエネルギーに変えていく、というバンドの音楽が悪いはずがない。出自がはっきりしている分、日本のソウル・フラワーのように思考と肉体がともすれば分裂することもない。鉄壁のダンス・ミュージックだ。これはメジャー2作目。インディーズ時代の再演もあった前作よりも統一感がある。(Yaz)
RAFI'S REVENGE (1998, FFRR/London)



 90年代になってアジア(主にインド)系イギリス人がぽつぽつと活躍し始めた。今や懐かしいエコーベリーなんてのもいたし、昨年はコーナーショップ、今年はこのADFが来た。93年に結成されたこのバンドは95年にアルバムデビュー。知る人ぞ知る存在だったこのグループを有名にしたのは、ADFにすっかり惚れ込んだプライマル・スクリームのメンバーだった。初期は超高速ブレイクビーツの過激なサウンドが売りだったらしいが、このアルバムではドラムンベース、レゲエ、ダブ、ヒップホップといった非メインストリームの音をうまく吸収し、再構築している。
 しかしこのバンドを何よりも特徴づけるのはその闘争的な姿勢だろう。本人たちは何故か非常にいやがっているそうだが、どうしてもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンと比較したくなる。マイノリティの立場から吐き出される社会への怒り。こういう音楽は世界中からもっともっとたくさん出て来そうなものだけど、やっぱりイギリスのような成熟した社会じゃないとこういうものの存在自体を容認できないんだろうね。(しんかい)

 アングロエイジアンが注目される98年,彼らのアルバムの中でも代表的作品として認知されているのが本作だ。これは完全なオリジナル作品集ではない。97年に発売された2nd「RAFI」のマテリアルを再構成したものだ。しかし,本作はその「RAFI」に感じられるエネルギーを何倍も圧縮し爆発しそうなほど密度を高めた一枚のアルバムに仕上がっている。緊張感に満ちた彼らの音楽はサウンドシステムによるダブ,ジャングルからの影響が色濃いが,意外なことに非常に聴き易くホップかつダンサプルである。当然,彼らを聴いて体が動く者もいるだろうが,それで彼らのメッセージを聴き流していると決めつけてはいけない。アーティストという立場であるならば,バンドが大きくブレークするにはまず音楽として受け入れられることが必要だ。ここで聞かれる詞はどれも攻撃的で直接的なメッセージとして機能するが,アーティストの訴えが広く聞かれるためにはどういったサウンドが相応しいか,という点において,彼らはまあまあ成功している。(信沢)

 おお、自分の血の中のニュー・ウェイヴ魂が騒いでおる。イギリスのアジア人=アングロ・エイジアンが結成したADFことエイジアン・ダブ・ファウンデイションは、ドラムン・ベース/エレクトロニカとダブ・サウンドを結合させたサウンドに乗せて、政治的メッセージ色濃いリリックをラガマフィン調で叩きつける5人組。アングロ・エイジアンのグループではあるが、いわゆるインドあるいは中近東風のサウンドはほとんど出てこない。その代わり植民地主義や人種差別など、彼らが置かれている状況に対する急進的なアジテーションがアルバム全編を覆う。このアルバムを聞いて真っ先に連想したのが、ポップ・グループ、スリッツ、リップ・リグ&パニックなどのダブを取り入れた70年代末のニュー・ウェイヴのバンドの数々。ヴォーカル(というかMC)などPIL時代のジョン・ライドンを思い浮かべるし。彼らもまた当時のイギリス社会の閉塞状況を背景に、ダブを下敷きにしたサウンドに乗せて急進的なメッセージを叫んだのであった。ADFの音楽も、表層こそ違え、そこに込められた思いは同じである。プライマル・スクリームのダブ・アルバムが好きなら、絶対聞くように。(鎌田)


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