ANDREW W.K.

I GET WET (2002, Island)



 これは、売れて欲しかった。ロックが“暗い”音楽になってから、はや10年が過ぎる。“明るい”音楽だった80年代ロックは今や郷愁か嘲笑の対象でしかない。ビリー・アイドルなんて、アメリカ人にとっての荒井注みたいなもんだろう。うつむいてギターをかき鳴らし、内省的な歌を歌うことに、いい加減うんざりしている人は多いはずだ。ハイヴスやヴァインズといったバンドが売れているのはその反動だと思うが、あそこまで行くと先祖帰りし過ぎ。ニルヴァーナ やパール・ジャムがロックを暗い音楽にしてしまう直前まで大手を振っていた、80年代ハードロック。その再来が、アンドリューWKだ。サウンド的に、具体的に80年代のどのバンドに似ている、というのではない。曲に、まずメロディがある。ギターが派手にかき鳴らされる。サビはみんなで合唱。にぎやかに、楽しくするために音はシンセで圧塗り。ベクトルが、“共有”の方向を向いている。みんなで大騒ぎして、歌って、暴れて、楽しさを共有する音楽。90年代にも確かにポップ・パンクという形でそういう音楽はあったが、やっぱりアメリカ人はハードロック。こういう不器用な骨太さがないと。これ本当に動くの?というボロボロの車に大勢でハコ乗りして、むちゃくちゃなスピードで一本道をすっ飛ばす爽快感。「She Is Beautiful」も「Party Hard」も「Ready To Die」も「Got To Do It」もみんな名曲。一瞬でいいから全米No.1になって、アメリカ中のキッズに愛されて、このジャケを真似るアホガキが続出して社会問題になって欲しかった。もう、そういう世の中じゃないのかな。(しんかい)


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