AZ

AZIATIC (2002, Motown)



 人脈的にはナスに近いAZ(エーズィー)。いつの間にかモータウンに移籍していたが、これはちょっと驚くべき内容のアルバムなのだ。  ヒップホップの歴史上、「サンプリング」の全盛期は90年代半ばぐらいで終わっており、その後はせいぜい引用(替え歌)ぐらいの使い方が多くなっている。同じネタをみんなが使い回して、いわば使い果たしてしまったという事情も無くはないが、もっと大きい要因はサンプリング権利料の高騰である。昔の曲をサンプリングするより、本人たちを呼んできて直接歌ってもらったほうが安くつく、なんておかしな現象さえ起きていた。だからサンプリング満載の昨年のジェイZのアルバムは、彼のような超大物の大金持ちだからこそ作り得たのだと言われた。しかしジェイZより遥かに小物の、このAZの新作は、ほとんどの曲でネタ曲をサンプリング。モータウンが社運を賭けて桁外れの制作費を注ぎ込んだか?なーんてことはもちろんなくて、ネタ元の多くは黄金期のモータウン作品。自分のとこの作品だから権利料もディスカウントで使えるのだろう。で、その結果、最近のヒップホップ作品にはちょっとなかったぐらい歌が満載の、非常にメロディアスで親しみやすい作品となった。まあ、そうなると肝心のAZのラップが霞んでしまいがちだという弊害も、もちろん伴う。  それにしても。果たしてこれってAZがやりたかったことなんだろうか。(しんかい)
PIECES OF A MAN (1998, Noo Trybe)



 Nas、Foxy BrownらとのプロジェクトThe Firmのアルバムは思ったほどに支持されなかったが、あまりインターバルをおかずAZのアルバムが届いた。TrackmastersのTone & P okeがプロデュースした曲が多いためか基本的にNasのセカンドアルバムに近いサウンドが聴かれる。3年前のファーストアルバム「Do or Die」から引き続きプロデュースのL .E.S.は80's R&Bネタを多く使用、シングルヒットにも充分結び付きそうなトラックも揃っている。「Just Because」などWill Smithの曲のような感触でその代表例。ゲスト陣にはThe Firmの面々はもちろん、MonifahやSWV(米盤には未収録の「Hey DJ」そのままの曲「Hey AZ」)などのR&B勢も華やか。「Last Dayz」でのR. Kellyサンプリングなども手伝いメロウな気分を盛り上げていて、Nasの滑らかなフロウが映える。今後Nasの2枚組みアルバムのリリースも控えていることだし、The Firm一派が面白くなってくるのはこれからかもしれない。(中村)

 Anthony Cruz=AZが第2のNasなどと呼ばれてデビューアルバムが評判となったのはもう今から2年以上前のことだろうか。当時のNasといえばデビュー作が「発売前から」ヒップホップクラシックとなるなど,ヒップホップ界の話題の中心的存在だった。 AZのデビュー作の内容は流石にNas並みという訳にはいかなかったが,ヒップホップ界の寵児に擬えられるということ自体,AZへの期待が大きかったことが伺えよう。先のThe Firmでアルバムとして公にされたNasやFoxy Brownらとの活動を踏まえてのこの第2作ではそのNasとの関係が色濃く出た作品となった。Trackmastersのシアトリカルな,悪く言えば過剰な演出が取り入れられているのは先のThe Firmがあってのものだし,ゲスト参加陣もダブっている。しかし,残念ながら二番煎じの感が拭えない部分があり,何やら全体の印象はThe Firmのアウトテイク集といった趣がある。この世界は義侠心がやはり幅を利かせるのだろうか。残念ながら,AZは現状においてNasの活動の範囲内でしかシーンでの存在感を示していない。(信沢)


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